初めて公開されたエレベーター 法定点検
しか頭の画廊で始終眺めておけば、何十年たった後、いずれにせよ額に入れた絵は、でもそのときの感情がありありと蘇る。
お茶ノ水には、駅をはさむ格好で聖橋とお茶の水橋という二つの橋がある。
聖橋のほうは、夜はライトアップされ、美しい橋として有名だが、その反対に位置する変哲もないお茶の水橋こそが、私のある記憶と深く結びついている。
私は東大の入試に落ち御茶ノ水にある予備校に通っていた。
その通学ルートは、丸ノ内線の御茶ノ水駅改札を出てお茶の水橋を渡り、駿河台へ行くというものだった。
私は朝が苦手なので、歩く途中で毎日、途轍もない絶望に襲われた。
丸ノ内線の御茶ノ水駅は、東大がある本郷三丁目駅の隣駅だ。
また苛立ちに拍車をかける。
なぜ私は本郷三丁目で降りずに御茶ノ水で降りて、お茶の水橋を歩いているのか。
一歩一歩這うように歩いて、橋の上に来ると、水に見入ってしまい、しばらく動けない。
決して予備校がつまらなかったわけではなく、面白かった。
だが、足止めを食らっているという意識はぬぐえない。
身を投げてしまいたいというのは大げさだが、行き場のない苛立ちを抱えたまま川面を見つめる日々だった。
単に朝が苦手で低血圧か寝不足の貧血でふらふらしているというのが真相だが、私は、「私を認めようとしない世間が、こうやって私を死に至らしめようとしている」と受け取った。
この曲解がパッションの火種になる。
実際、この予備校時代を絶対に無駄にしないという思いで過ごしたおかげで、予備校で学んだものは大きかった。
また、この一年間の受難は、いま何か行動を起す」そうとしたときの原動力に確かにつながっている。
ときを隔てることほぼ十四年、さらに私はM大学の就職面接を受けることになる。
再びお茶の水橋を渡るそのときの私は、情けなさでいっぱいだった。
私は三十二にもなって、まだ人の面接を受けに行くような身なのか。
子どもは二人いるのに、定職はない。
ここで踏ん張り切らないと大変なことになる。
そんな必死の思いで、面接を受けに向かった。
初めて、大学での職を手にした。
御茶ノ水は、私にとって「青春の呪い」のようなパッションがしみ込んだ土地である。
私は以来、大学に通うため、ずっとそのお茶の水橋を通っている。
一日として欠かすことなく、通勤時にお茶の水橋の途中で立ち止まり、浪人時代、就職浪人時代を瞬思い出す。
歩みをゆるめ水面を軽く見つめる。
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